夏の日本海を満喫!国鉄型で行く五能線の旅

夏の日本海を満喫!国鉄型で行く五能線の旅

国鉄型車両で楽しむ!最後の五能線ローカル旅

JR東日本 五能線は青森県の奥羽本線 川部駅から、秋田県の奥羽本線 東能代駅まで約150kmを結ぶローカル線です。川部駅といってもわかりにくいですが、すべての列車は川部駅から弘前駅に直通しているので、実際の運行形態は弘前駅から東能代駅までと言えます。
五能線はなんといっても絶景路線として有名です。青春18きっぷのポスターで一躍有名になった驫木駅(とどろき)をはじめ、時刻表の表紙や、行くぜ、東北を始めとする各種ポスターにも使われている他、観光列車「リゾートしらかみ」が土日だけでなく平日も1日に3往復走るなど全国屈指の観光路線として名を馳せています。
今回は、観光列車ではなく、あえて普通列車での旅をしていきましょう。
五能線の普通列車は2020年現在、「キハ40系」「キハ48系」という車両が使われています。

↑キハ40系車両

1970年代に製造が開始されたキハ40系列の気動車は日本中に配置されましたが、近年は新型車両に置き換えが進み、一般列車として運用に就くのはJR東日本管内では秋田車両センターに所属する55両のみとなり、五能線と、秋田県の男鹿線でしかお目にかかれなくなってしまいました。その秋田車両センターにも新型車両の導入が決まり、五能線でキハ40を見ることができるのは今年度末までとなりました。
さて、あえて観光列車に乗らず、残りわずかとなったノスタルジー溢れる国鉄型気動車で行くローカル線の旅に向かうこととしましょう。

時刻は朝7時前、やってきたのは川部駅。

実は五能線は川部から東能代までと言っても、普通列車のほとんどは通し運転をしておらず、途中駅の深浦で運行形態が別れています。そんななか、朝のこの便は上りの一般列車で唯一東能代まで直通運転をしています。しかもキハ40で運転される唯一の快速列車という特徴的な列車でもあります。
6:55 川部駅に快速幕の2両編成のキハ40が入線してきました。ここで方向転換をして五能線へと入っていきます。
6:59には対向列車の4両編成弘前行きが入線してきました。

↑821D 弘前行

↑乗車する3524D 東能代行き

川部駅に8分ほど停車したのち、列車は東能代駅に向け出発します。ローカル線ということで閑散としているのかと思いがちですが、朝は通学列車として沿線の高校生が多く利用するためある程度混雑しています。
りんご畑や田園地帯を30分ほど走ったのち、7:32に五所川原駅に到着しました。五所川原には五所川原農林高校や五所川原高校などの高校が多く、列車から多くの高校生が降りていき、先ほどまでの混雑もすっとなくなってしまいました。
ここでも列車は30分ほど長時間停車します。この後東能代まで3時間近く長時間停車はないので飲み物や買い物などはこの停車時間のうちに済ませなければなりません。

接続を取っている津軽鉄道の列車が到着し、五能線の対向列車が入線したらいよいよ発車です。7:58
土偶の駅舎で有名な木造駅(きづくり)で木造高校の生徒が降りるといよいよ車内はガランとします。乗客はほとんど五能線目当ての観光客といったところで、海側のボックスシート1つにつき1組(1人)程度の乗車率でした。
ここで朝食をいただきます。前日に購入しておいた青森のローカルフードである工藤パンのイギリストーストです。

↑通常のマーガリンが入ったイギリストースト(右)と期間限定の和栗あんホイップ(左)

五所川原駅から30分ほど田園地帯を走ると海沿いを走行し、鰺ケ沢駅に到着です。

↑乗車してきた3524D(左)と東能代発弘前行の827D 8:19に到着してから快速と離合し、8:50まで停車している。

3分停車で8:22に発車します。ここから先はいよいよ海沿いの絶景区間を走行するので窓も全開です。
冷房が効いている中窓を開けるのは普段ならはばかられますが、コロナ対策もあり、窓を開けている人も多くいましたので安心です。

↑いよいよ海沿いを走ります

都会ではレールもロングレール化されることも増え、「がたんごとん」といった音や揺れもなかなか体験しにくくなっていますが、五能線には原風景とも言うべきものが残っていました。国鉄の匂いがムンムンする列車に、レールのジョイント音と揺れ、時々唸るエンジンの音、雲ひとつない青空、澄み切った海、一瞬で通りすぎる踏切の警報音、潮の香りに混じる干しイカの香り、全てが心地よく最高の時間が過ぎていきます。

実はこの体験ももうすぐできなくなってしまいます。五能線が廃線になるという訳ではなく、新型車両がやってくるからです。いくら風情のある車両と言っても、もうすぐ製造から半世紀。さすがに置き換えなければならなくなりました。新型車両は2020年12月から投入され、3月末までに投入完了します。つまりもうこの車両たちに夏は再びやってきません。さらに、新型車両は窓を今までのように開けることはできず、上部が手前に倒れる形で少し開くだけなので、窓を開けてそこから風や音を感じるということはできなくなってしまうのです。観光列車のリゾートしらかみは窓が大きく、風景をよく見ることはできるものの、解放することはできません。ですので、五能線を堪能するとすれば今しかない訳です。秋頃からは線路改良工事が始まり工事日はこの列車は運休となるのでご注意を。

↑奇岩と澄んだ海を望みながらゆっくりと列車は進む

景色の綺麗な場所は普通列車でも減速して通過してくれます。海の真横を走ることもあれば、海沿いの崖の上をゆっくりと走ることもあり、飽きることなく景色を楽しむことができました。山あり海ありトンネルありの五能線にゆられ続けること約4時間。いよいよ東能代駅に到着です。千変万化する風景の中を走っているためか、長時間乗っていても全く疲れることなく、むしろもっと乗っていたいと思ってしまうほどでした。観光列車とちがい、車内設備は決して充実しているとは言えず、車内販売もないので先に飲み物や食べ物は買っておかなければいけませんが、その分国鉄型のノスタルジックな車内をたのしみつつ、車窓を集中して満喫することができるので満足度は非常に高い体験となりました。次に来るときにはもうキハ40はいないでしょうから、その時はリゾートしらかみに乗って楽しみたいと思います。

国鉄型で楽しむ約4時間の五能線の旅、とてもおすすめなので興味を持たれた方は是非新型車両が入る前に旅行に行かれてみてはいかがでしょうか。

ありがとう。キハ40。

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