日光から都内・千葉県内エリアへのルート
初の地下鉄日比谷線ルートでの有料着席列車として「THライナー」の運行が開始されたことが目玉の、東武鉄道2020年6月6日ダイヤ改正。このほか、ライナー系の増発や特急の曳舟停車なども盛り込まれたり、影では「しもつけ」廃止や、春日部始発上りきりふりの登場、日光線南栗橋以北から4扉ツーマン車が撤退などさまざまな変更が行われています。今回はそんな改正の中でほぼ宣伝がなされていないながらも、かなりお得に移動ができるルートが新設されていたので、その区間を乗車してみました。
県外移動がひとまず解除されたのを契機にやってきたのは東武日光駅。今回のネタは夜の上り列車ですので、昼間は観光客(特に外国人)が少ない、昨今では珍しい日光の町を堪能しました。
乗る列車はこちら。東武日光18:06発のけごん48号です。日光を6時過ぎに出る列車ですので、今回のような日帰り小旅行には最適な時間です。
色褪せないフラッグシップ・スペーシア
今回乗車するのは「雅」編成でした。スペーシア(100系)は1990年に登場した車両で、9編成が在籍しています。2011年度に内外装のリニューアルが行われ、「雅」「粋」「サニーコーラルオレンジ」の3色が3編成ずつにあしらわれました。現在は更に派手な金色の「日光詣」塗装が2編成に施されています。(余談ですが、この2編成はどちらもサニーコーラルオレンジの塗り替えであり、実は最も出会う可能性の低い編成は現状1編成のサニーコーラルオレンジとなっています。)
基本的には終始浅草およびJR線新宿発着(3編成が直通対応)の「きぬ」「けごん」の全列車に投入されていますが、日光~下今市の「特急連絡」、「スカイツリーライナー」の1便にも充てられる他、不定期では「日光夜行」や那須塩原、八王子までの営業実績があります。
温泉でのんびりしたり、車内であれこれ食べようとお土産を買ったりしてしまったのもあって発車5分前ほどに乗車したのですが、昨今のコロナ騒動もあってか、車内はガラガラでした。
座席の様子。スペーシアはバブル期真っ最中の登場という事もあり、とても豪華な仕様になっています。座席はモケットが分厚くフカフカで非常に快適です。また6号車には個室もあり、東武線内では3000円前後の追加で利用できます。今回は利用していませんが、こちらでは更に快適なプライベート空間となります。(不特定多数への非接触的な意味合いでも今のご時世にピッタリ…?)
フットレスト(足置き)も完備です。土足用と素足(靴下)用がリバーシブル出来る構造で、靴を出来るだけ脱いで休みたい私としては非常にありがたい設備です。
18:06 日光発車
最終的には2名が乗車し、定刻で日光駅を発車しました。車内で食べるために買った金谷ホテルベーカリーの美味しいパンや揚げゆば饅頭などを早速開けていきます。写真は窓際座席のテーブルですが、スペーシアの内装は随所に金縁があしらわれているのが高級さ(とバブリーさ)を感じさせます。(私は通路側の席ですが、窓際席には同行者がいます故撮影しています。)
(持ち帰るお土産まで食い散らかす始末…)
栃木県内の主要各駅を停車していきます。この時間帯の上りで栃木からの利用もあって驚きました。このけごん48号は「夜割」制度の適用列車で、通常の特急料金からさらにお得な料金で乗車できるため、出張帰りなどでも気軽に利用していそうです。今回の私の特急料金も840円(春日部まで)と非常に廉価です。
19:28 春日部(下車)
1時間半ほどで春日部に到着しました。春日部では降車できる号車が限られているため、慌てないで済むように座席指定時に降車口に近い席を押さえていました。
さて、ここからが今回の格安移動最大のポイントです。
リバティに特別料金無しで乗車
ここで乗り換える先は野田線(アーバンパークライン)です。しかしここで向かうホームは野田線ホームではなく伊勢崎線(スカイツリーライン)下りホーム。ここには19:31/33発の「アーバンパークライナー」が停車しています。
「アーバンパークライナー」は野田線で運行される特急列車(ライナー列車)で、500系「リバティ」のデビューと同時に設定され、2017年4月から運行されています。その中でこの便だけは浅草始発でここ春日部まで伊勢崎線(スカイツリーライン)を走行する列車となっています。停車駅はとうきょうスカイツリー、曳舟、北千住、せんげん台駅、春日部…となっていますが、なんとこのアーバンパークライナー、せんげん台以北ではライナー券不要となっています。
前後3両がそれぞれ大宮・柏両方向へ向かうために切り離されていました。
千葉県民の私は柏行きに乗車します。
実は浅草を18:49に出ているこの列車は、6月の改正まで浅草21:30発でした。増発によって運行時刻が大きく前倒された形で、これによって春日部でけごん48号との3分接続が実現しました。今回私が払っているのは夜割の日光→春日部のみ。なんと840円で日光から柏まで特急に乗ることが出来ます。
19:31 春日部発車
方向転換し、春日部駅をゆっくり発車しました。4番線から上り方向に進むのは違和感があります。ホームを出た先から転線し、いよいよ野田線内に入ります。ちなみにこのアーバンパークライナーが長い東武の歴史でも最初の野田↔伊勢崎直通の定期列車だそうです。
料金不要の区間であるからなのか列車名は書かれず、柏行きとだけ表示されています。ちなみに室内の混雑具合ですが、発車1分前ほどに乗車したところ2席が空いているのは3両のうち1区画のみで、立席者こそいませんでしたがほぼ満席に近いといった感じでした。アーバンパークライナー停車中でも野田線ホームで電車待ちをしている乗客は多く居たので、今後春日部の利用客へこの列車の存在が浸透していけばさらに乗車率は上がるものと思われます。「快適な特急乗り継ぎ」と銘打った今記事ですが、3分乗り換えでは座れたらラッキー…かもしれません。
今回触れていませんでしたが、特急料金とは別の普通運賃は日光~船橋で1580円となります。よって特急料金840円と足すと今回の料金は2420円になります。ちなみに私は金券屋で230円という破格の値段で売られていた券で乗車したのでなんと1000円ちょいで移動できました。これは有効期限が近い券がコロナ禍で叩き売りされていたもので、通常時であれば6~700円ほどが相場です。極限までケチりたいときに(もしくは株主であれば…)是非利用してみてはいかかでしょうか。
列車は各駅に停車していきます。江戸川を渡った先の川間は千葉県最北端の駅、ここからは千葉県内を東武特急で移動することになります。
新型特急の設備
座席は固めで、フットレストも無く「ビジネス特急」といった感じです。今回のようなライナーや鬼怒川線・野岩・会津線内の無料区間で乗車する分にはお得感があります。(長距離特急の場合、スペーシアよりも割高な特急料金設定な上に午後割や夜割の設定も無いのはちょっと頂けませんが…)
車内の様子(別日撮影)。新型特急らしい清潔感や広さはかなり感じられるデザインとなっています。天井部の意匠と照明の配置はかなり特徴的です。
トイレもピカピカで非常に快適です。
野田市内の駅を車内放送が途中でぶった切られてしまうほど高頻度に停車していきます。20時を回るかというところで野田市を抜け、運河に到着しました。
運河は2面3線で「国鉄型配線」に近い駅構造をしており、急行停車駅・折返列車の設定もあり春日部~柏間での運行上の主要な駅です。以前のアーバンパークライナーや臨時に設定された特急列車は当駅を終点としていた列車がほとんどでした。
ここからは再び通過運転となります。(といっても3駅しか飛ばしませんが…)
野田市内でパラパラと乗客が降り続けた結果、運河発車時点では1両に10数人ほどになりました。これまでの特急列車が運河までの運行だったときは柏まで走らせてほしいなんて思っていましたが、乗客の流動をみると自然な事だったのかもしれません。列車は終点柏までかなり心地良く飛ばしていきます。
柏駅では1箇所のドアしか開かないようで、注意が必要です。到着前にデッキに向かったところ、すでに数人が降車の為に並んでいました。
20:08 柏(下車)
春日部駅から34分で柏駅に到着しました。停車駅が同等の日中の急行が37分で運行しているため、それと同等もしくはやや俊足気味で到着しました。
スムースな接続で船橋へ
上の画像でお気づきかもしれませんが反対のホームには急行船橋行きが停車しています。これとは春日部に続きまたまた3分の接続、ダッシュしなければいけないほどでもなくとても効率よく乗り継げます。
複線化の完了を機に3月に設定されたばかりの柏~船橋間(船橋線)の急行は、途中停車駅を高柳と新鎌ヶ谷に絞り、同区間を20分弱で走破します。また原則上下線ともに高柳で対面乗り換えでの緩急接続も行われ、「ノロい野田線」というイメージを完全に払拭するような速達性を実現させています。今回の車両は古参ながら今もなお主力車両として活躍する8000系。高速走行時には結構揺れたりしますが、古い電車好きにはたまらない時間です。
20:30 船橋(下車)
柏からあっという間に船橋に到着しました。
今回東武日光から船橋まで2時間24分で到着することが出来ました。所要時間も他ルートより最短で、料金も最安値という最高のルートです。是非利用してみてはいかがでしょうか。
(余談:20:30から先のJR線・京成線の乗り換え接続を見ると20:39発 あずさ50号千葉行・20:35発イブニングライナー207号京成成田行き(←これは結構時間的に厳しいかも…?)となっており、ここから先も快適に帰宅できること請け合いです。)