青森県は八戸市の南部バス(現在は岩手県北自動車傘下)にて現役で活躍する古参のバス車両を追い求めて、勢いで東北新幹線に乗車。八戸で八戸線に乗り換えて本八戸で下車します。現在の八戸駅は当初「尻内」として開業した郊外の駅であり、八戸の中心市街地へはこの本八戸駅が最寄りとなります。八戸線は久慈までを結ぶローカルな非電化線ですが、この近辺では高規格な高架線を走行し、八戸市街地の鮫駅まではおおむね毎時一本が確保されています。
(左・八戸200か554 いすゞKC-LV380L改×キュービック(96年)/右・八戸200か860(八戸) いすゞKC-LV380N×富士重7E(96年))
本八戸駅を出ると早速、いすゞの中古バスが出迎えてくれました。右の赤い南部バスの車両は静岡県の遠鉄バスから中古車両としてやってきたいすゞ車で、富士重工のボディを架装しています。左の八戸市営バスの車両も同じくいすゞ車で、こちらはいすゞ純正のキュービックボディを架装しています。どちらも同じ96年式のいすゞ車ですが、ボディが異なるため全く別物の印象です。
こちらは、八戸市交通部では唯一となる京急バスからの移籍車となります。地方ではこのように都市部のバス会社などから経年車が中古車として転属してきている場合が多いです。このキュービックも立体的な前面と前面窓下部の曲線、左右の視野拡大用の三角固定窓が特徴的な車両ですが、年式の古さから現在では都心部ではあまり見かけなくなった車種の一つです。
まずは本八戸駅から歩いて中心街へ向かいます。八戸の中心街では三日町・八日町・中央通り・朔日町・六日町の5つのバス停が「八戸中心街ターミナル」として一括りに案内されており、各方面のバスがそれぞれのバス停より発着しています。
中心街①の三日町にある「八戸ポータルミュージアム『はっち』」にて「まちパス」を340円で購入します。これは八戸市中心部のエリアのバスが1日乗り放題になるフリーパスで、南部バスの他に八戸市営バス・十和田観光鉄道バスでも共通利用できます。八戸市は市の主導でバス事業者統一の各種乗車券やバスマップ(それもリアル地図に落とし込んでいるタイプ!)が存在していて、非常に便利です。
【乗車 中心街①三日町→ラピアバスターミナル】(八戸200か588(八戸) いすゞU-LV324L×富士重7E(94年))
券を買ったところで早速バスに乗車します。南部バスのターミナルはここから北東にある「ラピア」というショッピングモールに併設されているため、市内を不特定に走る特定の南部バス車両を追っかける場合はここで「張る」のが一番です。記念すべき最初の乗車は早速古参のバスでした。本八戸駅前で見たいすゞ×富士7Eよりも1世代前の車で、川崎市バスからJRバス東北に移籍し、そのご同社の路線縮小による余剰で南部バスに移籍した経歴を持つ車両です。
ラピアのバスターミナルにやって来ました。色々な車が止まっています。
(八戸200か1008(五戸) 日デPB-RM360GAN×西工96MC(05年))
船橋新京成バス中古の日産ディーゼル車がやって来ました。最近八戸にやってきた車両で、同僚の車両も複数台移籍しています。古参級では無いものの個人的にはこれも狙いの一つでしたが、残念ながら今回出会えたのはこの一台だけ。ちなみにこの車両は五戸営業所所属です。
(八戸200か807(八戸) いすゞSKG-LR290J1×エルガミオ(15年))
奥にいたこちらは中古車では無く南部バスが新車で購入した車両です。同車は南部バス初のノンステップバスであり、また会社が岩手県北自動車に吸収される前の最後の新車でもあるというメモリアル要素のある車両でした。
【乗車 ラピアバスターミナル→ピアドゥ イトーヨーカドー前】(八戸200か821(八戸) 日野KC-RJ1JJCK×レインボー(97年))
手前のレインボーRJは東武バスから東野交通を経てやってきたワンステップ車でした。塗りつぶされていて分かりにくいのですが前面には東武バス時代に行灯が設置されているというクセのある車両です。
そろそろお昼も近づいて来たので、合間の時間を見てラピアの中をうろついたのですがピンとくるものが無かったので、ひとまずこのバスでラピアから離れることにしました。
ラピアのすぐ近くには「ピアドゥ」というもう一つのショッピングモールがあり、こちらにはイトーヨーカドーが入居しています。このラピアとピアドゥの2つのショッピングモールが八戸市民の生活を支えており、ナマの八戸市民の生活を垣間見ることが出来ます。ということでピアドゥのフードコートにお邪魔し、しょうらくというローカルチェーン店で「たまり醤油ラーメン」を味わいました。The フードコート飯らしい程よいチープさ(もちろんそれに合わせてとても安い)と、青森県民好みである濃い味が非常に良かったです。
【乗車 ピアドゥ イトーヨーカドー前→ラピアバスターミナル】(八戸200か959(八戸) 日デKL-JP252NAN×西工96MC(03年))
腹ごしらえを済ませたところで再びラピアのターミナルに戻ります。やって来たのは中型ロング車の京王バスからやって来た日産ディーゼル・スペースランナーJPでした。京王中古のJPは南部バスが吸収されたみちのりHDの各社で大量に導入されており、ここ南部バスでも例外なく増殖しています。※写真は別の同型車です。
こんな感じにターミナルが京王JPだらけになることも。京王バスファンからすれば天国かもしれませんが、古バス目当ての私からするとどうしても味気無さがあります。今日はもうダメかなぁ…と思っていると…
(八戸22か624(八戸) いすゞP-LV314L×キュービック(85年))
…!
この度最大のお目当ての車両、624号車がターミナルにぬるっと滑り込んできました。平均15年程度と言われるバス車両にして御年35の長寿車両です。元は京急バスに所属していました。
35年選手!大窓のキュービック
サイドビューの様子。車体はこの記事の一番最初に登場した車両と同じ「キュービック」ですが、この時期のキュービックの特徴はこの天地方向に大きな側面窓です。2段サッシが故にその大きさがよりはっきりと分かり、非常に格好いい見た目となっています。中ドア横の開閉方向が異なる窓は車掌乗務用の窓であり、路線バスに車掌が乗っていた時代の貴重な証でもあります。
非公式面とリア周りの様子。大窓2段サッシがずらっと並ぶ様子は壮観です。リアのまたテールランプ設置部分が凹んでいるのもこの初期車の特徴であり、非常に精悍な見た目となっています。
中古車両が数多くいる南部バスの中でも頭一つ抜けた最古参車であり、最後の旧塗装&残り2台の方向幕装備車両ということで、同社内では大切に扱われているようです。近年大規模な車体補修も行ったそうで、35年前のバスとは思えないほどの美しさを保っています。外観の写真が欲しかったため残念ながら乗車は叶いませんでしたが、走り去っていくまで見送りました。
(八戸230か11(三戸) 日デKL-JP252NAN×西工96MC(03年))
624号車を見送った後には三戸営業所所属の「11ぴきのねこ」ラッピング車がやって来ました。これは三戸町が「11ぴきのねこ」の作者の出身地であることから行われているコラボレーションで、「11」に合わせるために登録ナンバーもわざわざ希望ナンバーが取られています。
(八戸200か758(八戸) いすゞLKG-LV234L3×エルガ(12年))
中古車が多い南部バスにはこのような珍車もいます。これは主に高速バスを運行するWILLER EXPRESSの中古車両で、同社が運行していたなんばエリアの路線バスの廃止によって用途が無くなったところを南部バスが購入したという経緯を持ちます。中古移籍にしては年式が若い車両で、この車両が南部バス初のエルガとなりました。ラピアと岬台団地を結ぶ岬台団地線の専属車両として運行されており、ラッピングも施されています。
【乗車 ラピアバスターミナル→本八戸駅】(八戸200か838(八戸) いすゞKC-LV280L×キュービック(99年))
お目当ての撮影も済んだので、本八戸駅へ帰ります。帰りの車両は山陽バス中古のキュービックでした。特徴的なライト上のモールが眉毛のようで、可愛らしい(?)見た目となっています。ちなみに南部バスのキュービックボディ車両はこの838号車と先ほどの624号車の2台のみと、これまた希少な存在となっています。わずかな時間でしたが高出力V8エンジンの音を楽しめました。
本八戸駅に帰って来ました。最後にもう一台、この地で撮影してみたかったバス車両が居るので、その車両の到着を待ちます。(南部バスではありませんが…)
(八戸200か897 日野KL-HU2PPEE×ブルーリボンシティ(03年))
それがこちら。つばめ交通という会社の日野ブルーリボンシティ(フルノンステップ車)です。この車両は本八戸駅とイオンモール下田を結ぶシャトルバス専用車として運用されていますが、最大の特徴はこの青と白の塗装です。なんとこの車両の元事業者、千葉海浜交通時代の塗装そのままに走っているのです。中古車両で前の事業者の塗色そのままに走る例は非常に珍しく、貴重なものです。(それにしても本八戸からイオンモール下田ってかなりの距離ですね…)
全ての撮影を終え、八食センターで夕食を摂りました。ここの移動にはシェアサイクルを利用しましたが、それについてはまた別の機会に紹介しようと思います。
八戸駅前に取っていたホテルで地元名産・三島シトロンで一人乾杯をしつつ、バス三昧な一日を終えました。
余談になりますが、翌朝帰りの新幹線の前に数分だけバスロータリーを眺めていると、なんと再び624号車が姿を現してくれました。また記録にいそしみます…