臨時航路に特別な船
2021年7月に就航する、東京九州フェリー向けに作られた新造船「はまゆう」。この船は竣工後に“足慣らし”として一足先に系列会社の新日本海フェリー(小樽~舞鶴・苫小牧~敦賀)で運航されていました。
このうち3月27日-28日の南航便が、ドックに入港する兼ね合いで臨時航路の小樽~敦賀で運航されたので、この珍しい便に乗船してみました。
小樽から敦賀へ
小樽市街で夕食を済ませた後、21時半過ぎに小樽フェリーターミナルにやって来ました。旅客ターミナルは岸壁の一番奥まった所に位置し、これから乗るはまゆうを横に見ることが出来ました(記事先頭の写真)。船の手前側ではきびきびと船内の貨物エリアにトレーラーが積み込まれており、物流の要であることを実感しました。
ターミナル内に入り、乗船手続きを行います。支払いは予約時に済ませてあるので、検温を無事にクリアした後にスッと乗船券が手渡されました。
余談ですが、今回の予約はイレギュラーな航路にイレギュラーな配船ということからか電話のみの予約受付となっていました。少々の手間とはいえ、かえって今回の乗船の「レア度」が実感できました。
乗船開始まで待機します。「フェリーターミナル」と聞くと旅人達で雑多になっているような印象がありましたが、ここ小樽ターミナルは隅々まで清潔感のある綺麗なターミナルでした。(単純に乗客が少ない、というのもあるでしょうが…)
待つこと1時間弱、乗船が開始されました。ターミナルの3階から真っすぐ伸びているボーディングブリッジを渡って搭乗します。これからの旅路に期待しながら、ガラス越しに船体を見ながら通路を進んでいく瞬間には何物にも代え難い興奮があります。
新造船・はまゆうの船内
乗船して順路通りに進むと、乗客エリアの中央にある広々とした吹抜けに出ます。見る限りどこもかしこもピカピカで、新しい建物?の匂いが心地良いです。
さて、はまゆうの一般旅客には4等級5種の客室が用意されています。まずこちらは最も廉価な「ツーリストA」です。二段寝台であり個室ではありませんが、ベッドごとに箱型ユニットが組まれており、開放寝台とはいえカプセルホテルに近いような居住環境が整備されています。
(写真が分かりにくいのですが)続いて「ツーリストS」です。こちらは鍵付きの完全個室で、ベッドとミニテーブル・テレビが設置されています。窓は無く、部屋のサイズ感はネットカフェの個室に近いものがありますが、プライバシーとセキュリティが完全に確保され、ある意味閉塞感がほどよい安心感を生み出しているように思えました。枕元にコンセントと充電用USBポートが完備されているのも今ドキの船らしい、ありがたい設備です。
次の等級は「ステートルーム」。2~4人利用が想定されている客室とのこと。テレビの他に冷蔵庫やポット、手前側の扉の中にはシャワーとトイレも完備されているので、ここまでくると普通のホテル然としてきます。
ベッドは2人分で、残りは奥のソファがエキストラベッドとして機能するようです。窓もある室内は広く、3人程度であれば長い乗船時間内でも十分羽を伸ばして滞在できるなと感じました。またこの「ステートルーム」には「ウィズペット」という区分も存在し、ペットと共に航海を楽しむことが出来ます。(ペットは連れていませんので取材は出来ていませんが…)
最後はこの扉、最上級の「デラックスルーム」です。船内には2室のみ存在する客室だそうで、贅沢ですが今回はこちらを利用します。
室内は手前から 浴槽付きユニットバス・ベッドエリア(2つ)・リビングエリア(テレビ・冷蔵庫・机・椅子・ソファ完備)・バルコニーの4つのエリアに分かれていました。室内はダークブラウンを基調とした、落ち着きつつ高級感のあるインテリアで纏められていました。
(ちなみに、物は試しとツーリストSからデラックスルームまで3種全てのベッドに横になってみたのですが、このデラックスルームだけ明らかに寝心地の良いベッドでした。)
23半過ぎ、出港の時間になりました。デラックスルームだけの特権・バルコニーで屋外から出港の様子を眺めます。まだまだ冷たい小樽の夜風が船旅の興奮に火照った体に心地良いです。
ゆっくりと離岸していきます。小樽港の美しい夜景に心を奪われながら、このゆったりとした時間の流れこそ船旅の醍醐味だなぁと感じます。
陸を離れるのを見届けるともう日付を大きく跨いだ深夜。露天風呂付きの大浴場に向かいささっと入浴したあと、道内で購入した本ししゃもをつまみに日本酒をたしなみながら…気づけばそのままベッドの中へ。
日本海の上でゆったりと
窓から差し込む朝日で目を覚ましました。時刻を見ると朝6時、朝食の開始時刻まではまだ時間がたっぷりありますが、上等な寝床にお酒も入っての快眠ですっきりと起きられた上、海も穏やかなお陰で揺れも少ないので、人の少ない今のうちに船内をうろついてみます。
奥ののれんの先が大浴場です。日本海を眺めながら入浴できる露天風呂の他にサウナまで用意されています。しかし残念ながらサウナはこのご時世の感染予防対策として閉鎖されていました。ここから先の設備紹介もこういった閉鎖状態が続いてしまいます…
カラオケが楽しめる「アミューズボックス」やサロン室、デッキ(これは波高のため閉鎖)を外から見るだけ見る船内徘徊。こちらは海を見ながら汗をかけるスポーツルームだそうです。
ここを撮っていて汗つながりで昨日まで着て来た衣類を思い出し、階下にあるランドリースペースで洗濯機を回しました。売店では柔軟剤まで用意されており、朝食終わりまでに乾燥まで済ませることにしました。
船内3フロア間を移動できるエレベーター。もちろん隅々までピカピカですが、乗ってみると中々大きな音と揺れもあり「乗り物の中の乗り物」の面白さを感じられます。
朝食の時間になりました。レストラン「うらら」に一番乗りで入りました。注文はタッチパネル方式で精算は伝票読み込み式のセルフレジ。最初からこの予定だったのか、今の情勢に合わせてなのか分かりませんが、できるだけ非接触で済むような工夫がなされています。
朝カレーセット(600円)を食しました。勝手にこういう船内食堂は高めの値段設定なんだろうなと踏んでいたのですが、新日本海フェリーのレストランはどれも思っていたより廉価。思わずあれこれ食べてしまいそうです。
売店をうろついた後洗濯物を回収、やることもないので部屋に戻って二度寝しました。ちょっとだけ揺れが強くなってきましたが、気になるほどではありません。
ベッドの上で微睡んでいるとあっという間に昼食の時間です。選んだのは「新潟たれかつ丼」(920円)です。甘めのたれが食欲を進めました。
電波が入らないため、暇つぶし用に船内wi-fiでは無料の漫画サービスが提供されています。私は室内で衛星放送(BS)のプロ野球を観つつ、乗船前に買い込んでいた酒とつまみや銘菓を楽しんだり、誰も居ない露天風呂でのんびりしたりしながら過ごしました。
夕方になって能登半島が遠目に見えてくるあたりで雲が垂れこみ、雨がぽつぽつ落ちてくるようになりました。ただこのあたりから陸の電波も拾うようになります。
再びレストランに向かい、雲の切れ間から差し込む夕日を眺めながら夕食を取ります。
最後の食事を終えて室内で残りわずかな時間を楽しんでいるとあっという間に明かりが見えてきました。身支度を終えると20時半、敦賀に到着です。
名残惜しいですがここではまゆうとお別れです。敦賀は雨がしとしと降っていました。徒歩客なのでささっと駅までの送迎バスに乗って終了です。わたしは駅前のホテルに宿泊し、翌朝また次の目的地へと向かいました。
動画で見る
今回の旅行の詳細はこちらの動画でまとめています。船内や客室内の詳細、夕食・その他メニューなど、ここに書けなかった部分が満載ですので是非ご覧ください。